Thursday, February 01, 2007

思考実験(精神分離 反駁)

Bamboo Flower: 思考実験(精神分離 回向)

続き

免許証の男は確かに彼女の元婚約者であった。
その記憶がやっと戻ってこようとしていた。
この時点で彼女は、自分が普通でないことに気づいている。
夜中に押入れをあさっていた自分、あれは完全に別の自分だ。
それから彼女は夜を恐れるようになったのは言うまでもない。

彼女には、まだ理解できない点があった。
自分が2重人格だとしても、それを示す証拠となる写真を送ってきたのはだれなのか?
盗撮カメラの設置は?
ストーカーはいったい誰なのか?

そのとき、「カメラ」に関して彼女は少し思い出した。
あれは、盗撮用のカメラではない。
そう。
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あのころ、自分は彼とこの部屋で住んでいた。
彼にはもちろん自分の2重人格が知れていたが、それでも自分を好きだと言ってくれる、そんな彼だった。
そう、自分の症状の治療のため、別人格の行動を撮影するためにカメラを取り付けたのだ。
彼は、その映像をたまに病院に持っていき、先生と相談していた。
自分は、カメラの存在を彼から教えられてはいたが、カメラのありかまでは教えられていなかった。
理由は、「お前の知っていることはすべてあいつに筒抜けだから」。
カメラの場所まで知ってしまうと、同時に別人格もそれを知る。
別人格はそのカメラを破棄するだろうと考えたのだ。

彼女の別人格は、はっきり言って狂人だった。
彼をナイフで傷つけるなど、日常茶飯事であったようだ。
そんな別人格までまとめて付き合ってやるといった彼の言葉だけが、そのときの彼女の支えだった。

ある日、それは壊れる。
狂人にも、異常な生活にも疲れた彼が、下手な浮気をしたのだ。

続く

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