Sunday, February 04, 2007

思考実験(精神分離 解脱)

Bamboo Flower: 思考実験(精神分離 厭離)

続き

ビデオで語る彼女の3人目の人格は、このようにしゃべる。

カルドと呼ばれる2人目の人格は20歳の男、どのようないきさつで2人目が生まれたのかはわからないという。
真司の不倫を最初に気取ったのもカルドだという。
そもそもカルドは、真司を快く思っていないことから、もとより辛く当たっていた。
さらに不倫をきっかけに、真司を脅迫するのみにあらず、不倫相手に執拗な嫌がらせを始めた。
真司は、自らも精神病を患ってしまったため、交際を続けることをあきらめ、別に居を構えることとした。
しかし、カルドの不倫相手に対する嫌がらせは収まらなかった。
真司は、不倫の負い目から、不倫相手に「決して彼女を責めるな」との戒厳令を強いていた。
「その代わり、自分がすべての責任を負う」。
不倫相手が自殺未遂を起こしたことをきっかけに、真司は酒に逃げるようになった。


その間、彼女自身は、真司との離別によって精神破綻をきたした。
カルドをうらみ、咆哮し、そのときに3人目の人格が誕生したと言う。
辛い記憶をすべて引き受けて、3人目の人格はひっそりと生きた。
彼女自身(1人目の人格)はこれによって、真司との思い出や自分が多重人格であること、ほとんどすべてを忘れることに成功した。

しかし、カルドはしっかりとその記憶を引き継ぎ、やはり執拗な嫌がらせをつづけた。
最終的に、真司はすべてを苦にして、ほとんど自殺に近い形で肝臓を壊し逝った。

悲劇はさらに恨みを生んだ。
自殺未遂と真司の死を経た不倫相手が、退院後妙な行動をとり始めていた。
不倫相手は真司の服を着て、元凶である精神分離の彼女をストーキングし始めたのだ。

カルドは、ストーカーが不倫相手であることを知っていた。
カルドは、「不倫相手は自分を殺しに来ている」と直感しただろう。
そのため、深夜にストーカーによる不法侵入と傷害を偽装した。
わざわざ自分をナイフで傷つけて。
これによって、1人目の人格を恐怖させ、引越しを促したのだ。
そうでなくても、ストーカーの被害者を装うことで、警察の庇護を受けられると考えたかもしれない。

しかし、思惑が外れた。
1人目の人格は、自分が多重人格であると自覚し始めていた。

もちろん、3人目の人格もストーカーの正体を知っていた。
殺される直前に1人目の自分に教えておかなければと、告白ビデオを撮影した。
ヒントとして、自分に対して写真も投函した。

そして、ビデオを見終わった彼女は、すべてを思い出していた。
真司との蜜月の時間を。
その真司を自分が追い詰めて殺したなんて。
押入れの写真を引き出して、見つめた。
写真の焼けた跡は、すべてツーショットの写真の自分の部分を焼いていた。
そう、これはあの旅行のときの。。。
気づかぬうちに涙がこぼれていた。
もう彼女にはどうしようもなかった。

そしてカウントダウン最後のノックが響いた。

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男装した女はドアに手をかけた。
女はどうやってかこのドアの合鍵を作っていた。
しかし使う必要がなかったようだ。
鍵はかかっていない。

そう、このドアの向こうに、多重人格女がいる。
今日の日をどれだけ待ったことか。

入った先に待っていたのは、写真をこれでもかと床におっぴろげて、
その上にうつぶせに突っ伏している多重人格女。
抜き足で近づき、前に回りこんでみると、その両眼は涙と思われる液体を噴出し白目を剥いていた。
息をしていない。
どうやって死んだのかわからないが、まあいい。
声を立てて嘲笑い、女はその部屋を後にした。

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はあ、やっと終わった。思考実験。
構想4分。脚本20分。
多重人格の辛さを考えていて、思いついたストーリープロットを文章にするのに、ちまちま日記で1週間かかってしまいました。
いや、思いついちゃったんで、なんか書いとかないともったいないなぁと思いまして。

エントリー「思考実験」では、思いついてしまったくだらない作り話をしようと思っています。

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