Saturday, March 03, 2007

思考実験(パトリオティズム 2.0)

続き

国民のID管理体制が行き渡った2013年、人間は生まれもって指紋と動静脈、網膜などの生体情報をデータベース登録された、飼い牛のごとき存在になっている。
2015年には法体制の整備が進み、死刑等の従来の刑罰が撤廃される。
代替の刑罰として、国民IDに対するランク付けがなされるようになる。
たとえるならこうなる。

元来、運転免許に採用されていた減点制度。
各運転手には、最初にまとまった点数を与える。
道交法の違反が判明した時点で、運転者の点数は違反の種類にあわせた減点がなされる。
その点数がある閾値を切ったものは、自動的に免許効力の剥奪、それに準ずる制約を課される。

つまり、国民IDにランクが付与されており、生まれもって一兵卒の国民は、
犯罪を犯すことでそのランクを下げ、逆に無犯罪を一定期間継続すると高レベルの行政サービスを受けられる「騎士」としてのアイデンティティを得る。
この制度により、さらに強固な国家体制を築くことに成功する。
無論、この場合国民年金の未納はランクを下げることに他ならない。

さすがにこれらの「階級」はプライバシー保護の観点から公表されることはない。
「個人に対して付与されるものであり、その情報は国家が正当に保管される」という触れ込みで導入されるのだ。

この時点で、次のような妙な現象が起こる。

まず、地域格差の拡大。
行政サービスには限界が存在する。
日本国各地で同等のサービスが保証されるということはまずありえない。
人口の集中している中央には、自然と洗練されたサービス体制が敷かれることとなり、
相変わらず財政に苦しむ地方はそのサービスレベルを提供することができない。
そのため、地方にはランクが低いもの、中央にはランクの高いものが集中することになる。

次に、裏政府の形成。
低ランクにより生活に困窮する国民が、ランク向上のためによりいっそうまじめな国民になるか。
答えはNoである。
締め付けのキツい政府のやり方に対する反動として、これらの逸れ組を束ねた新たなコミュニティーの形成にたどり着く。
それが共産なのか、はたまた別の思想なのかははっきり言うことができない。
というのも、このコミュニティーはまさにさまざまな理由で国家から「非国民」の判を押された者たちの集団であるからである。
思想が統一されておらず、そのため強力な経済団体などのバックアップを持たない。
超国家的ユートピアの形成である。

最後に、「愛国者」の横暴。
愛国の徒は、日本を「われわれのものだ」と主張する。
つまり、日本とは、国民として認められたものだけが占有する領土であり、行政であり、文化であると主張する。
『私は年金払ってるわよ、なぜ払っていない人が近所に住んでいるの?』

さて、これらをあわせてみよう。
何が起こるか。
自治国家の成立である。
領土としては日本の内部である。ただし日本の庇護は受けない。
参政もしない。
そのような非国民の集合体が、九州、四国を中心に『ユートピア』を形成する。
ただし、経済活動のみは日本本体と切り離されることなく密な連携をとるであろう。
それは、ある意味中国から見た台湾のようなものである。

2022年、それは起こる。
自治国家は、日本本土の下請け技術屋や第1次産業のメッカとして確固たる地位を確立している時代。
自治国家は半国籍自由化を行う。
そう、日本としてのアイデンティティというよりは、自治国家としてのアイデンティティが芽生え始め、超国家的な思想から、思い切った実力主義体制へと移行しようとする。
これにより、経済活動の活発化を試み、日本本土やそれにならぶ中国(この時点で中国は3国に分離していると予想する。ここでいう中国は、東海岸の中央となる国家)に匹敵する政治力を得ようとする。
大量の外国人の流入と、治安悪化が起こる(私はこれが相関する事象とは考えていない、ただし起こるときは同時に起こるだろうと考える)。

ここで、日本本土は驚くべき対策をとる。
「自治国家の切り離し」と、それにあわせた「国民の選別」
つまり『踏み絵』である。

続く

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