Thursday, April 17, 2008

土佐弁辞書 III-2 歴史・民族 ('05復刻版)

3時間目<文化>高知の文化

目次


<2.歴史・民族>


少し歴史的背景を書こうと思う。高知は昔土佐国(初期は土左国)と呼ばれ、その辺鄙さゆえに「鬼国」と呼ばれ蔑まれていたという。内実は、天嶮たる山岳のすきまに暮らす民族がお互いを牽制し合い住んでいた。それが香宗我部氏、長宗我部氏という有力豪族に仕切られるようになったところに織田信長率いる全国統一軍が攻め込んでくる。一説には明智光秀の謀反にも絡む話でもある(明智と長宗我部はつながりがあったという)。最終的には豊臣軍に参加した長宗我部氏は今度は大阪夏の陣にて敗北し、公儀家康の支配下に置かれることになる。こうして、家康に出向させられた山内家率いる上士と県下各地に点在していた地元豪族転じて郷士が対立する構造となった。

高知県の県民性として、中央の者(上士)に阿諛迎合せずいつまでもゲリラ戦争を繰り広げていたように、何かを押し付けられること、同じひとまとまりに収まることが嫌いであるらしい。少し好戦的なところもある。時は過ぎて300年の後に郷士から出た坂本竜馬や岩崎弥太郎(三菱財閥創始者)、上士の板垣退助、後藤象二郎が長州薩摩勢と江戸や京で近代化に奔走し、土佐藩から高知県へ。こうして今の体となった。


民俗的側面を書くと、山脈と海洋に阻まれ他国との流通も進まなかった高知のために、独自の文化が根ざしている。たとえば、狩猟、農耕、漁業、それぞれに伝わる手法と祈祷文化、ムラの形成。すべてが洗練されていない土臭いものばかりだが、それだけに奥が深く難しい。壇ノ浦で負け去った平氏の落ちた仁淀の村々ではいまだ平氏の言い伝えが残っているし、祭文をはじめとした念仏思想または呪いの文化まで残っているところもある。土佐弁も平安や鎌倉の時々の文化をいままで冷凍保存したのではないかというような表現などが残っている。参考資料:高知県史<民俗編>

関係ないかもしれないが、流通の悪さを思うことでひとつ。自分の祖母は母を身ごもっていた時期に急に実家へ帰るといって、夜中1日山の中を歩き通しで東津野から仁淀へ帰ったという。昔の人はすごい。

土佐弁辞書 III-1 高知の文化 ('05復刻版)

3時間目<文化>高知の文化

目次


<1.概要>



地方は高知県中東部。西部のみ幡多弁というまた別の方言。私の叔父に依れば、高知には他にも清水弁、仁淀弁など細かく分類すると数え切れないほど派生があるらしい。土佐弁は伊予弁(愛媛弁)に近い(「がいな」とか)部分もあるし阿波弁(徳島)に近い(「~きに」、「しわい」など)部分もある。特徴としては、年寄りの土佐弁熟練者は「ぢ」と「じ」、「づ」と「ず」を完璧に使い分けて、またそれを聞き分ける能力がある。おれが聞いたところ、若干鼻にかかるのが「ぢ」と「づ」であったように思われたが。


そして、土佐弁使用者はそれほど古典に違和感を覚えない。十分な古典教育を受けていなくても大体理解していて教養がある。

また、返杯(杯を空けて注いでもらい、注がれたら必ずその人の杯に酒を注ぐ)など、飲みの席(土佐弁ではおきゃくという)における文化が充実している。高知では全国とは違い麒麟が圧倒的シェアを誇る。麒麟の消費量もこの県がNo.1らしい。ローカルでやってるキリンのCMが面白い。他社のビールを「たっすい」(味のうすい、つまらないの意味)と評し、キャッチコピーは「たっすいがはいかん」。味のまろやかなAsahiは好まれにくい県民性らしい。そんなところだから昼間から酒を煽る人も多い。そのためか交通事故死率No.1。風紀もそれほど洗練されていない。なのでか知らないが中絶率No.1。大昔に「鬼国」と呼ばれていたというのがうなずける(出身者でありながら)。

私のイメージかも知れないが、四国山脈を隔てて北はおっとりした性格、南は苛立ちやすい(土佐弁でいられという)性格だと思う。そういえば、教育自体もそれほど水準が高くない、というよりかなり低い。高水準の公立の中学校と高校がほとんどないのは高知くらいのものだと聞いた。体育の水準も低い。県対抗の陸上競技は下から数えた方が遥かに早い。格闘技系は強いらしいが。

良いところも書かなくてはなるまい。県の自治は政策面等で水準が高い。自然が多く、土地もふんだんにあり、窮屈な生活を余儀なくされるような人はいない。基本的に騒音問題は気にしなくても良い。農家が多いためか食いっぱぐれる心配もあまりなさそうだ。携帯などの普及はあれほど広い県下にスムーズに進み、全国でも早い方だったと言われる。文化として、新しい良いものは躊躇なしに採り入れる性格が基盤になっているので、「よさこい」のような楽しいものが次々生み出される。

男女の間に言語の差があまりない。それだけでなく、序列もあまり定かでない。これは男女同権が叫ばれるようになる前からの話で、そういう気性が女にも男にもあるということらしい。というか経験的に確実に女の方が強い。また、酒を異常に強く進める。テンポが早い。高知の女性を嫁にすると人生が面白いことになる(詳しくは言わない)。

気候は住むに最高である。夏は確かに暑いが、台風や何かで暑いのはふっ飛んでいくし(それ以外のものもふっ飛んでいくけども)。冬はさほど寒くないし。愛すべき風土と文化、一度来てほしいものである。

土佐弁辞書 II 接尾語・音便変化 ('05復刻版)

2時間目<構文(接尾語・音便変化)>


目次


基本文型


はっきりいって日本語(標準語)のまんまです。主語+修飾語+述語。完璧ですね。日本語で使える助詞はそのまま使えます。プラスアルファでいろいろな助詞や助動詞があるわけです。土佐弁が古典文法からの影響を多分に残しているのはご存知でしょうか。そのために古典文法から抜粋したようなものまであります。

活用形



動詞や形容詞、形容動詞、助動詞には活用があります。これもまた日本語と同じ(ていうか普通)です。活用語尾がやたら訳分からないのが多いのです。日本の方言はおおよそこの活用語尾と接続する助詞で特色が決まります。だべさ、だっちゃ、じゃけん、というふうに。これが土佐弁だと「や」(「じゃ」)「やき」「やきに」的になってきます。各個の説明は後述。土佐弁は音便に限らず短縮が基本なのを頭にいれておいて下さい。

助詞的単語


    目次
  • じゃ/や/き/に/が/が/が/で/じゃち/やち/で/ぜ/ぜよ/た/か/ち/ちや/ちゃ/ぞね/けんど/わや/や!/な!/に/ぞね/ねや/にゃあ/ろう/のう/にゃあ/


じゃ
文末の強意の助詞。訳「だ」。普通の日本語だとおじいさんおばあさんが使うものですが、関西とかく高知は誰でも彼でも使っています。

上に同じく文末の強意の助詞。訳「だ」。関西弁「やねん」でおなじみですね。比較的若い人が使います。

文末の原因、強意の助詞。訳「から」。使用例:みるき→みるから。頻度の高い使い方として組み合わせがあります。「やき」「じゃき」は典型。これは日本語の慣用句「だから」「であるから」に匹敵します。

組み合わせてのみ使われる強意の助詞。訳「ね」が妥当か。日本語の「ね」の頻度よりも格段に高いため一概には言えない。「きに」「やきに」「じゃきに」頻出。

普通は主格の助詞ですね。これが動詞の直後に来るのが土佐弁です。意味はまったく違います。完全に強意です。むしろ断定ですか。堅苦しく訳すと「のである」。使用例:するがじゃきに→するのであるから。これで混乱しないでください。ゆっくり訳せば理解できます!!

語尾があがると疑問です。訳「のか?」。使用例:すっといくが?→すぐに行くのか?

すいません、これで最後です。英語で所有代名詞(mine等)と呼ばれる単語があります。「△△のもの」と言う意味で、標準日本語では「△△の」で通用したりします。使用例:おまえのが小さい→おまえのものが小さい。それを土佐弁では「△△のが」と言います。使用例:おまえのががこまい(前例と同義)。つまり、「が」は「もの、こと」を表す場合があるのです。使用例:あそこで遊びゆうがはだれぞ→あそこであそんでいるのはだれですか、いかんがをもってくる→悪いやつを持って来る
で、じゃち、やち
「で」は日本語です。「じゃち」は土佐弁固有でしょうか。打ち消しの助動詞の後にくっついて「んで」ですが、これで「しなくて」という意味。音便は関西弁と微妙な差異。使用例:(関西)くわんでええ→たべなくていい、(土佐)くわいじゃちかまん、くわいでかまん→たべなくていい。また、転じて「~だって」という意味でも使う。こちらのほうが口語的。使用例:おまんじゃち独身じゃか→おまえだってどくしんだろうが。「ち」は下を参照のこと。

文末の強意の助詞。しり上がりにアクセントが乗ります。関西弁では「やで」土佐弁では「がで」が多いでしょう。

上の「で」の代わりにこちらを用いても構いません。
ぜよ
上の「ぜ」と呼びかけの「よ」でおなじみ「ぜよ」の完成です。坂本竜馬だけでなく、その当時の中岡慎太郎ほか土佐藩出身者は皆これを用いていたと思われます。そしていまでも良く使われます。

これは全国共通だと思いますが、過去をあらわすときの助詞です。使用例:くった、くうた、くいよった、くわいた

付加疑問的に使います。「じゃか」「やか」で頻出。関西では「やんか」でしょうか。

直訳「といったって」「したって」。短くなまるのが土佐弁の慣例のようです。使用例:がいなことゆう(いう)たち→厳しいことを言っても、したちぱあ→したとしても意味がない
ちや、ちゃ
坂本竜馬がドラマで描かれるとしきりにこれを発しています。口語で頻発のこれは「いかんちや」で「いけないってば」という使い方です。つまり意訳で「ってば」となるでしょう。
ぞね
「ちや」に続き口語。日本語にあるあの「だぞ」の「ぞ」と調子合わせの「ね」。意訳「ですよ」(「本当に分かってる?」って尋ねる感じで)。やさしい意味合いで使うことが多いでしょうか。時代劇では女性がよく使っている印象ですが、男女にまったく差がないのが口語土佐弁ですのでどうぞ気軽にお使いください。伊予では「ぞな」が頻発ですね。使用例:いかんぞね→いけないですよ
けんど
ぜひとも「けど」は「けんど」にしましょう。
わえ
「わよ」みたいにして最後につける強調の修飾語。なのに男性もばりばり使います。使用例:そんなにがやがやいわんでもやるわえ→そんなにがみがみ言わなくてもやるわよ(やるって)。音便(?)変化で、「るわえ」が「らーえ」になったりします。わかりにくい応用は、「んわえ」が「なーえ」になることでしょうか。使用例:しやーせなーえ→したりしないって
わや
上に同じ意味で、どちらかと言うとこちらの方が男性的でしょうか。んー?すごく迷うところです。どっちを使ってもいいでしょう。音便変化は上に習い、「らーや」「なーや」「かーや」と言う風になります。
や!
関西系統一でしょう。命令形は最後が「や」ですね。土佐弁はこれがなくても命令形にできます。使用例:のめぇや→のみなさい
な!
ここが相当味噌です。関東では「はやくしな」で「はやくしなさい」ですが、高知では「はようしな」で「はやくしないで!」になります。すごいことにまったく逆ですね。使用例:のみな→のむな。頻出「なや」で強調。

「~のに」を短縮できるのが土佐弁です。使用例:したらいかんに→したらいけないのに

「~だぞ」を短縮して「~ぞ」でいいです。使用例:あれはかまきりぞ→あれはかまきりだぞ
ねや、にゃあ
猫でもなんでもありません。高知県民はにゃーにゃーいうのです。「ねや」のなまりだと思われます。同意を求めたり呼びかけたりするときに文末で「~ぞにゃあ」(訳:「~だよねぇ」)と使ったり、単発で「にゃあ」(訳:「なあ、おい」)でもあります。結局にゃーにゃー言っています。使用例:にゃあ、ありゃーいかんぞにゃあ→なあ、あれはいけないよなぁ?。ちなみに私は東京から実家へ帰って久しぶりに親父がにゃーといっているのを聞いたときに軽くカルチャーショックを受けました。
ろう
「~だろう」もこの際短縮です。使用例:なにしゆうろうにゃあ→なにをしているのだろうねえ。私の祖父は「しただろう?」を「しつろう?」といいます。
のう
「の」にアクセントをつけておきましょう。最近の若い人は使わなくなっているやつです。訳「なあ」。語尾につけて同意を求めるニュアンスにしたり、これだけで単発で呼びかけになったりします。「にゃー」に近いなぁ。
にゃあ
未然形について「ないと」の意味。使用例:くわにゃーいかん→食べないと行けない。関西では「なあ」を使いますね。「にゃあ」は土佐弁だけではないかも知れないとも少し思います。でも形容詞の未然形にもつくのは土佐弁だけでしょう。使用例:しろーにゃあいかん→白くなければならない


わかりましたか。適当に「がじゃきに」といってみてください。一日2,3回やればえもいわれぬ感興を味わえるでしょう。


助動詞的単語


    目次
  • ゆう/よった/ちゅう/ちょった/ちゃる/ちょく/ちゃある/ん/す/さす/


ゆう
関西弁の「よる」、「おる」に相当します。英語でいう現在進行形です。動詞の連用形につなげて使い、連句「ている」で訳せます。土佐弁はないですが、関西系は「しやがる」の意味にもなりますのでご注意ください。使用例:くいゆう(関西:くいよる)→たべている。活用形は日本語とは違う特殊なものです。それも後述。ちなみに否定は「やーせん」「よらん」
よった
上の過去形にあたります。英語の過去進行形です。訳「ていた」。同上で「しやがった」にもなり得ます。使用例:さっきはサッカー見よった→見ていた
ちゅう
ネズミでもなんでもありません。直訳「してしまっている」ですから、英語の現在完了です。継続の意味にも、完了の意味にも、経験の意味にも使えますのでまるきり一緒です。関西のほかの範囲では「ちょる」とか言ったりするでしょう。「ておる」がなまって「ちょる」と「ちゅう」なんですね。否定形は「ちゃーせん」「ちょらん」です。使用例:ごはんたいちゅう→ごはんを炊いて(しまって)いる
ちょった
もう説明は要りませんね。過去完了です。すごい、英語といっしょじゃん。「ておった」のなまり。使用例:ごはんがたけちょった→ごはんが炊けていた
ちゃる
これも関西方面によくありますかね。関西弁では「たる」のはずです。「てやる」のなまりでしょう。訳「てあげる」。連用形に接続しますが、發音便が「う」に変形することが多いでしょう。使用例:くうちゃる、くっちゃる(関西:くうたる、くったる)→たべてあげる
ちょく
「ておく」のなまりです。使用例:ごはんをたいちょく→ごはんを炊いておく、応用例:おいちょっちゃりや→置いておいてあげなさい、おいちょっちゃっちゅうちゃ→置いておいてあげているってば
ちゃある
「てある」のなまりです。使用例:ご飯を炊いちゃある→ご飯を炊いてある

否定の助動詞「ず」が終止形でも「ん」という音で使われるのが日本の方言です。使用例:みん→みない
す、さす
なつかしい古典ですね。さすがに「しむ」はあまり聞きませんがほんの最近まで使っていたと聞いた覚えがあります。使役の助動詞です。日本語では「せる」に訳すようになっています。独自に他動詞を形成すると音便変化がすさまじいので注意。使用例:みさす、みらす(誤りかと思われるが慣用)→みさせる、くわす→くわせる(独自他動詞)、くわいたら→くわせたら


変化


命令形語尾が「い」音「え」音併用なので気をつけましょう。


動詞・する
せ・し、し、する、する、すれ(すりゃ)、しー・せー
助動詞系・ゆう
ゆうろ、よっ・やーせ、ゆう、ゆう、よりゃ、より・よれ
助動詞系・ん
んろ、んかっ、ん、ん、?、?
助動詞系・す
さ・そ、い、す、す、しゃー、しー・せー

土佐弁辞書 I 自立語 ('05復刻版)

1時間目<辞書(自立語)>


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    凡例
  • (標)...立派にも標準語なのですが、一般的にはあまり使われないマニアックな言葉、用法で、かつ土佐弁圏ではまだ普通に使われているものを載せています。
  • (古)...「なに?これはすでに使われていない言葉ですか?」すでに古語、文章語に分類される言葉もよく出てきます。


おら、おまん(おまい、おまんさん)
頻度最高。おれ、おまえです。

○○んく
訳「の家」、おらんく、おまんく、あんたんく、ひとんく、じぶんく、となんでもありです。ローカル番組で「おらんく風土記」という、はらたいらが出てるやつがあった。

おんしゃー
訳「おまえ」。おまんより強い。喧嘩を売るとき常用。

ようだい
訳「屁理屈、文句」。使用例:ぶつくさようだい言わんとさっさいきや→ぶつぶつ文句を言わないでさっさといきなさい

いごっそう(男)、はちきん(女)
司馬遼太郎によると「異骨相」と表記、はちきんはある俳優によれば「男を4人てだまにとる」ことから因んだと言う。どうですかね。訳「豪傑、快活な人」。土佐人の気勢を表す言葉とされる。

おきゃく
飲みの席、飲みにいくことをいうらしいです。われわれの世代で使ったことはありませんが親父は使ってますので確実に存在します。こういう風に、世代間で使うものと使わないものと、土佐弁も時代の波を越え変化してきています。

わや
名詞ですか?形容詞ですか?相当悩むところですが、「わや」で名詞、「わやや」で形容動詞的利用可になるんじゃないでしょうか?「あやや」を連想させる・・・意味は「駄目、無効、崩壊状態mess」で、「わやくちゃ」で強調されます。慣用句「わやにする」が「駄目にする」。

へち
「縁」と近いでしょうか。「ちがうところ、別の場所、思いもしない変なところ」を意味します。応用例:とっとへちへほおってどうしよらー→ぜんぜん違うところへ投げてどうするんだよ

かんき、かんきもん
(標)「勘気」または「癇気」、癇癪を起こすことを意味します。現代的にいうと「きれる」でしょう。「かんきもん」はすぐきれる短気な人のことです。

たまるか・(瀕)たまーるか
(古)感嘆詞的使用。びっくりしたときに使う言葉です。動詞「たまる」が「我慢できる」とかそういう意味で、標準語でも「たまらん」「たまるものか」はかろうじて残っている表現でしょう。それに付加疑問(反語?)の「か」ですね。「たまるものか」は連結して初めて意味を持ちますが、「たまるか」は独立で意味を発揮します。訳「なんてこと!、そりゃあひどい、すごい」

ひいとい
これは国語辞典に載っていないのを見てショックをうけた言葉です。「一日間」を表す言葉で、それ以降は普通にふつか、みっかとなります。ちなみに、月の最初のついたちは「いっぴ」と言ったりします。





がいな
形容動詞、連体形で使われることが多いため上の形で記載。訳「えらい、強引な、乱暴な」

ひやい(冷い)
「お冷」という言葉で標準語にも残っている表現。訳「さむい、つめたい」。むかし、はなまるうどんで「中のひや」って頼もうとして「中のひやいの」って言ってしまい、店員が混乱したことがあります。

ぬくい(温い)
文章語として残っています。訳「暖かい、温かい」

しよい
頻度最高。訳「簡単、容易」。簡単さが強いと、アクセントを強めて「しんよい」なども可。語源は「~し易い」をあらわす土佐弁「~しよい」だと思われます。慣用句セクション「(動詞の連用形)よい」参照

しわい
「吝い」と書いたりするようです(吝嗇でりんしょくと読みます、調べてみましょう)。文章語で「けちな」という意味のようですが、土佐弁ではもっといろんな意味があります。訳「しぶとい、性格が悪い、けちな」。

みぞい
「足がみぞい」は強烈です。訳「短い」

能がわるい
これもしんどいところでしょう、標準語圏の人が「脳が悪い」と言われたと思って怒ってしまうという逸話はあまりにも有名。だいたい有機物に対して使う言葉ではありません。訳「便利でない、使いにくい、面倒な、具合が悪い」

ちまい・こまい
土佐弁は短略が大好きだと思い浮かべれば想像がつくかも知れません。訳「ちいさい」

やおい・やりこい
変な意味ではありません。日常用語です。訳「やわらかい」。アクセントが「お」につくのが特徴。

りこい
「利口」が形容詞化したものです。そんなぁとお思いでしょうが、できてしまうのですよ、「い」を付けただけで。訳「利口な、賢い」

のかな
形容動詞。ゆっくりしていてじれったいこと。訳「悠長な」

すっと
副詞。訳「すぐに」

だきな
形容動詞。訳「乱雑な、汚い」

ざっとした
動詞で、上と同じ意味。訳「雑である」

たっすい、ぴっすい
形容詞。訳「薄い、物足りない、粘りが足りない、気弱な」

げに、まこと、まっこと
訳「ほんとうに」。「げにまっこと」で最高強調。

こじゃんと
副詞。訳「えらく、ひどく、とてつもなく」

よけ、よけー
形容動詞の連用形「余計に」から転じて、「多い、頻度が高い、度合がきつい」副詞的に使用すると「より」。使用例:よけいかん、よけあつい、よけあげる、よけしゆう、まっことよけあるにゃあ


ひとっちゃー・たいちゃー
意訳「ぜんぜん」、直訳「ひとつも」

なんちゃー
これが使え出すと高度な域に達しています。うちのお袋が「なんちゃーじゃない」(訳「何てことない」)を頻出。私事ですいません。直訳「何も」。使用例:なんちゃーそんなことせんじゃち→何もそんなことしなくても

なんぼし
上に同じ、直訳「幾らほども」

べらぼうに
古典にあります。訳「たくさん」

びっしり、ぎっちり
訳「よく(頻度が高いこと)」。

ぼっちり
訳「ちょうど、いい加減」。使用例:おまんにぼっちりやのー→おまえにちょうどだねえ

しょー
副詞です。これでいろいろな形容詞を極端に強調できます。訳「とても、大変に」。使用例:「しょーしよい」(というかこれの訳がしょーしよい)

ざんじ
これも謎のうちの一つです。「暫時」に由来したはずですが「しばらく」とかいう意味ではありません。副詞的に使用することのほうが多いです。訳「すぐ」

どだい
(標)「土台」と書くそうで、副詞で「根本的に」という意味です。国語辞典にも載ってるので普通の日本語ですが、高知ではこれがえらく頻繁的に出てきます。これを違和感なく使えるようになってやっと土佐弁使いといった感じです。使用例:こんまいきどだい無理じゃろが→小さいから絶対無理でしょ

よいよ
副詞で「よくも」「えらく」などにあたるこの単語は、むしろ感動詞的に単発でも使われる人気語ですが、使い方が難しいので分からなければほかの単語でごまかしましょう。使用例:よいよ綺麗にふいたもんにゃー→えらく綺麗に拭いたもんだなあ

とっと
副詞で「ずっと、かなり」。これは、空間的、または時間的に大きな開きがある様子をさします。使用例:とっと先へいっちゅう→ずっと先へ行ってしまっている、とっと前についちゅう→ずっと前に着いてしまっている

まっと
標準語の「もっと」と同じ文脈で使われるので訳も「もっと」でよさそうですが、よくよく考えると少しニュアンスが異なります。訳:「もうちょっと」。ということは、「もっと」よりも惜しさが強いのでしょう。「もうまっと」などと使うとより惜しさがでます。

ちっと・ちっくと・ちくと
副詞で「少し、ちょっと」の意味。「ちっと」は「ちっとも」などで標準語として採用されていますね。「ちっとも」は「ちょっとも」と表現する地域もあるようで、「ちょっと」と「ちっと」の関連の深さがうかがえます。土佐弁オリジナルなのは「ちくと」、青年以上がよく使います。

動詞コーナー(全部載せようとすると大変な量です。すこしだけを載せます)




まく、ぶちまかす、まける
「水を撒く」というとみなさんは主体が能動的に水を撒布する様子を思い浮かべるかもしれません。土佐弁では「水をこぼす」という意味になります。だから「お茶をまく」といっても不思議なことではありません。お茶をこぼしただけのことなのです。標準語圏の人はこれでつまづくそうです。お茶を撒布するって何?と。他動詞で、自動詞形は「まける」です。負けるではありませんのでお気をつけを。

かやる、こける
(古)「返す」。自動詞、訳「倒れる、転ぶ」。無機物が倒れることも「かやる、こける」と言います。かやるは「返る」のなまりでしょう。使用例:茶瓶がかやる。他動詞はかやす、こかす

おらぶ
(古)WindowsのIMEでは変換してくれませんが、古語で叫ぶという意味の言葉です。高知ではまだまだ使えます。使用例:ぎっちりおらびゆう→ずっと叫んでる

おじる
(古)「怖じる」と書きます。これも文章語です。現代語の「びびる」の代わりに使ってみましょう。

おどろく
(古)「驚く」。「びっくりする」の意味で使ってもいいんですが、年配者がつかう「おどろく」はその意味ではありません。訳「目が覚める」。古典でもそう習いましたよね。土佐弁ではまだまだ使えますよ。使用例:はようおどろく→早く目が覚める

まぎる
(古)「紛る」。土佐弁では主に「邪魔になる」という自動詞です。でも、他動詞「邪魔をする」的に使用してもいいでしょう。

こたう
(標)「応える」の古語、文章語です。身にしみたり参ったりすることをいいます。音便が面白いです。使用例:まっことひよおてことおた→まったく寒くて応えた

いぬ
(古)古典でよく出るこの単語は「往ぬ」で、「帰る」とか「立ち去る」とか云う意味になります。「いぬる」も同様。連用形は「いん」。「帰って」は「いんで」。

かく
(標)「掻く・舁く」の転で、「担ぐ」「引っ張って(引きずって)ゆく」の意味になります。連用形音便「かいて」が頻度高。

くる
(標)くる=「刳る」は「えぐる」とも読み、穴を開けることです。「くりぬく」の「くる」です。使用例:穴をくる

たてる
(標)ドアを閉めるときに「戸をたてる」といいます。「閉てる」とも書きます。そのとき、ドアの間に指を挟んだりすると、「指をたてる」とも言います。

けびる
「けちる」と「削る」の中間です。

ちびる
(標)「禿びる」。鉛筆などが消耗して小さくなっている状態を表します。

わいこら、わんつく、びーこら
ろいろい

ほたえる
(古)漢字を当てると「騒える」と書くそうですが、読んで字のとおり「ふざけて騒ぐ」の意味です。

ごんごん
流体が勢いよく流れるさまを表す擬態語です。時間の流れにもつかえます。使用例:お湯がごんごん減りゆう→どんどん減ってる

くるめる
(古)「包める」。土佐弁では「片付ける」の意味になります。使用例:はようくるめぇや

つくねる
えづく
いがる
わりことし
訳「わるいことをする奴」、つまり意訳「悪い奴」「悪ガキ」。まあ逆があるなら「ええことし」になるでしょうが、そんなものは使いません。





びっくり音便

もんて、もおって
「戻って」がなまったものでしょうか。「もんて来る」が頻出。訳「もどって」。「もん」が「戻らない」の意味になるときも。使用例:もんずつ→もどらないまま

まう、もうて、まいゆう、まいやーせん、まわん
「回る」が短縮されると「まう」、古典読みで「もう」になりますよね。そういうわけなのか、土佐弁では「まう」、連用形は「もう」「まい」になります。使用例:ぐるっともうてくる→ぐるっと回って(巡って)来る、ぐるぐるまいよったちいかん→ぐるぐる回っててもいけない

ぬくいて
「それは『温めて』やないが?」とおばあちゃんに聞いたりしました。少なくとも仁淀のほうでは「ぬくいて」で通用します。

「ない」の音便
連用形は「のう」、転じて「無くなる」は「のうなる」or「ないなる」、でも「なくす」は「なくす」

「寝る」の音便
連用形は「ねえ」、「ねて」は「ねえて」、「ねてない」は「ねえちゃーせん」、でも「ねている」は「ねえゆう」でなく「ねゆう」が一般的。




慣用句

(動詞の連用形)さがす
(標)あまり使われなくなった日本語。意味は「~まくる、~すぎる、いろんな場所で~する」ことです。高知では若い人も使用可なのです。

(動詞の連用形)くさす
「腐す」転じて「~し残す」、途中でやめることをいいます。「~ぱなし」と近い。使用例:どーれもやりくさし→全部完成してない

ばー
「ばかり」が「ばー」になったりします。訳「くらい、ばかり、だけ」。使用例:おまんばーやりよったちいかん→あなただけやっていてもだめだ、あればーやろう→あれくらいやろう

(動詞の否定)ずつ
訳「しないまま」。使用例:くわんずつ→食べないまま

(動詞の連用形)ちゃー
助動詞的単語のところに乗せてもいい熟語です。「ては」のなまりで、頻度は高。特徴的な使い方としては並列の意味で「~しては~をする」という使い方がありますが、それを「~しちゃー~する」とします。使用例:きいちゃー書ききいちゃー書きしゆうで→聞いては書いて、聞いては書いてと、そんなことしてますよ。

(動詞の連用形)よりけ
おおよそ、動詞に接続する現在進行の「ゆう、よる」に『状況』を表す気配の「気」がついたものだと思われます。慣用的に次の意味となります。訳「~している場合」。わかりづらいと思うので使用例を見てください。使用例:ほら、くいよりけやないで→ほら、食っている場合じゃないぞ。

よう(動詞の未然形)ん
古典の「能く~ず」にあたり、能力がなくできないことを意味します。使用例:よう食わん→(おなかいっぱいだから)食べれない

(可能の動詞の未然形)ん
能力がなくできないことと、状況がそれを許さないことの両方を表すことができます。使用例:食えん→(おなかがいっぱいだから、か、食べすぎると太るから)食べれない

られん、れん
禁止の意味を動詞に付加します。使用例:行かれん→行ってはいけない

<(動詞の連用形)+てorで>か、いくか
これは相当難易度が高いでしょう。これも助詞的単語の部門に入れていいものです。特に古典の雰囲気を残したこの単語は、「反語」という今ではとっつきにくい表現を1語でクリアしてしまう万能語です。つまり、この「か」で「~いいだろうか、いやいけない」というような微妙なニュアンス、まあやわらかくいえば、「そんなのでどうする?」と諌めたり、英語のLet'sに通ずるような「やめよう」とか「しよう」とかいう雰囲気をかもし出します。応用例:はようせいでか!→早くしないでどうするんだよ、早く行こうよ(早く行きなさい)、いかいでいくかや(「いかいで」は「行かないで」の短縮形、多分「ん」の音便変化、「で」は助詞的単語参照)→行かなくてどうする、行きなさい。

(動詞の連用形)よい
(標)「~しやすい」は「~しよい」となります。使用例:くいよい→食べやすい、しよい→しやすい(転じて「簡単」の意、形容詞「しよい」参照)


ざまーない
そのままだと「様はない」です。これが標準語で通用するか疑問があったので載せておきました。「ざまあ見やがれ」の「ざまあ」として標準語にも残っている立派な文章語です。さて、「ざまーない」は「あの様はない」転じて「みっともない」です。適当に使ってください。

おうのめった
分解すると二つの土佐弁です。「おうの」はまあ英語の"Oh"でしょう。感動詞で意訳は「うわあ」というところでしょうか。「めった」は「滅多」と表記していいと思います。ひどい状況を表すことから転じて「こまったなぁ、ひどいなぁ、しまったなぁ」と使われることが多いです。

よばん、よーばん
ほとんど「よーばん」ですね。「およばぬ」が妙な短略でこうなります。「心配には及びません」が「心配によーばん」、「遠慮には及びません」が「遠慮によーばん」です。つまり、しなくていいことを前につけて使えばいいでしょう。使用例:速達によーばん普通でええわえ、上級使用例:よーだいによーばん→へりくつはいらない

にかあらん
俺はずっと「~に変わらん」のなまりが語源だろうとずっと思っていました。アクセントが「か」にあるのでそう聞こえてしまうのです。訳は「~に違いない」ですから、上の解釈が間違いだとも言い切れません。しかし、先日文献を調べていたら「~にか、あらん」が古典で「~に違いない」という意味で、それがそのまんま土佐弁では残ってしまっているということを書いてありまして。「か」は助詞だったのです。それこそへぇとうなってしまいました。使用例:ちったーすすんじゅうにかあらん→ちょっとは進んでいるに違いない、変わるにかあらん→変わるに違いない

なんなが
文法解釈、「何」「な」「が」。土佐寮で頻出。意訳「なんだよ」。喧嘩を売るときも使用可。使用例:それなんなが→それ何だよ、なんなが!(怒)→なんなんだよ!(怒)

こがに
直訳「こんなふうに」。同様に「そがに」は「そんなふうに」。「こがい」でも「そがい」でも「そがー」でも通じそうです。

ほんなら、ほいたら
まあ、関西では通じるでしょうね。直訳「それじゃあ」。使用例:ほんならにゃー→それじゃあね

こたーない
非常に申し上げにくいのですが、土佐弁は大事なところまで略してしまう言語らしいです。元は「なんてことはない」であっただろうと思われます。その「何」を省略して「こたーない」です。訳も何も「なんてことはない」と言う意味です。別の説も考えられます。土佐弁では「こと」が「大事、大変なこと、大したこと」を意味するときがあります。それを用いるなら「こたーない」(ことはない)は「大したことではない」という意味になるでしょう。自分の家族が怪我をしたりして近所の人とかから心配されたら、「あんなんこたーない」と言ってやりましょう。

まず2008年最初の投稿

さて、今年の活動と参りますが、
その前に、お断り。
去年宣言していた、曲を作るプランは断念しました。
/*仕事のため*/

/*Bloggerの次のバージョンはいつでるのかなぁ*/
/*RTTが遅くてかなわない*/

今年の活動

まず、Internet Archiveさまにお世話になり、昔の自分の文献を引っ張ってきて復刻。
曲作る
C#の勉強+XAMLかSilverLightか何かをやる