Thursday, April 17, 2008

土佐弁辞書 II 接尾語・音便変化 ('05復刻版)

2時間目<構文(接尾語・音便変化)>


目次


基本文型


はっきりいって日本語(標準語)のまんまです。主語+修飾語+述語。完璧ですね。日本語で使える助詞はそのまま使えます。プラスアルファでいろいろな助詞や助動詞があるわけです。土佐弁が古典文法からの影響を多分に残しているのはご存知でしょうか。そのために古典文法から抜粋したようなものまであります。

活用形



動詞や形容詞、形容動詞、助動詞には活用があります。これもまた日本語と同じ(ていうか普通)です。活用語尾がやたら訳分からないのが多いのです。日本の方言はおおよそこの活用語尾と接続する助詞で特色が決まります。だべさ、だっちゃ、じゃけん、というふうに。これが土佐弁だと「や」(「じゃ」)「やき」「やきに」的になってきます。各個の説明は後述。土佐弁は音便に限らず短縮が基本なのを頭にいれておいて下さい。

助詞的単語


    目次
  • じゃ/や/き/に/が/が/が/で/じゃち/やち/で/ぜ/ぜよ/た/か/ち/ちや/ちゃ/ぞね/けんど/わや/や!/な!/に/ぞね/ねや/にゃあ/ろう/のう/にゃあ/


じゃ
文末の強意の助詞。訳「だ」。普通の日本語だとおじいさんおばあさんが使うものですが、関西とかく高知は誰でも彼でも使っています。

上に同じく文末の強意の助詞。訳「だ」。関西弁「やねん」でおなじみですね。比較的若い人が使います。

文末の原因、強意の助詞。訳「から」。使用例:みるき→みるから。頻度の高い使い方として組み合わせがあります。「やき」「じゃき」は典型。これは日本語の慣用句「だから」「であるから」に匹敵します。

組み合わせてのみ使われる強意の助詞。訳「ね」が妥当か。日本語の「ね」の頻度よりも格段に高いため一概には言えない。「きに」「やきに」「じゃきに」頻出。

普通は主格の助詞ですね。これが動詞の直後に来るのが土佐弁です。意味はまったく違います。完全に強意です。むしろ断定ですか。堅苦しく訳すと「のである」。使用例:するがじゃきに→するのであるから。これで混乱しないでください。ゆっくり訳せば理解できます!!

語尾があがると疑問です。訳「のか?」。使用例:すっといくが?→すぐに行くのか?

すいません、これで最後です。英語で所有代名詞(mine等)と呼ばれる単語があります。「△△のもの」と言う意味で、標準日本語では「△△の」で通用したりします。使用例:おまえのが小さい→おまえのものが小さい。それを土佐弁では「△△のが」と言います。使用例:おまえのががこまい(前例と同義)。つまり、「が」は「もの、こと」を表す場合があるのです。使用例:あそこで遊びゆうがはだれぞ→あそこであそんでいるのはだれですか、いかんがをもってくる→悪いやつを持って来る
で、じゃち、やち
「で」は日本語です。「じゃち」は土佐弁固有でしょうか。打ち消しの助動詞の後にくっついて「んで」ですが、これで「しなくて」という意味。音便は関西弁と微妙な差異。使用例:(関西)くわんでええ→たべなくていい、(土佐)くわいじゃちかまん、くわいでかまん→たべなくていい。また、転じて「~だって」という意味でも使う。こちらのほうが口語的。使用例:おまんじゃち独身じゃか→おまえだってどくしんだろうが。「ち」は下を参照のこと。

文末の強意の助詞。しり上がりにアクセントが乗ります。関西弁では「やで」土佐弁では「がで」が多いでしょう。

上の「で」の代わりにこちらを用いても構いません。
ぜよ
上の「ぜ」と呼びかけの「よ」でおなじみ「ぜよ」の完成です。坂本竜馬だけでなく、その当時の中岡慎太郎ほか土佐藩出身者は皆これを用いていたと思われます。そしていまでも良く使われます。

これは全国共通だと思いますが、過去をあらわすときの助詞です。使用例:くった、くうた、くいよった、くわいた

付加疑問的に使います。「じゃか」「やか」で頻出。関西では「やんか」でしょうか。

直訳「といったって」「したって」。短くなまるのが土佐弁の慣例のようです。使用例:がいなことゆう(いう)たち→厳しいことを言っても、したちぱあ→したとしても意味がない
ちや、ちゃ
坂本竜馬がドラマで描かれるとしきりにこれを発しています。口語で頻発のこれは「いかんちや」で「いけないってば」という使い方です。つまり意訳で「ってば」となるでしょう。
ぞね
「ちや」に続き口語。日本語にあるあの「だぞ」の「ぞ」と調子合わせの「ね」。意訳「ですよ」(「本当に分かってる?」って尋ねる感じで)。やさしい意味合いで使うことが多いでしょうか。時代劇では女性がよく使っている印象ですが、男女にまったく差がないのが口語土佐弁ですのでどうぞ気軽にお使いください。伊予では「ぞな」が頻発ですね。使用例:いかんぞね→いけないですよ
けんど
ぜひとも「けど」は「けんど」にしましょう。
わえ
「わよ」みたいにして最後につける強調の修飾語。なのに男性もばりばり使います。使用例:そんなにがやがやいわんでもやるわえ→そんなにがみがみ言わなくてもやるわよ(やるって)。音便(?)変化で、「るわえ」が「らーえ」になったりします。わかりにくい応用は、「んわえ」が「なーえ」になることでしょうか。使用例:しやーせなーえ→したりしないって
わや
上に同じ意味で、どちらかと言うとこちらの方が男性的でしょうか。んー?すごく迷うところです。どっちを使ってもいいでしょう。音便変化は上に習い、「らーや」「なーや」「かーや」と言う風になります。
や!
関西系統一でしょう。命令形は最後が「や」ですね。土佐弁はこれがなくても命令形にできます。使用例:のめぇや→のみなさい
な!
ここが相当味噌です。関東では「はやくしな」で「はやくしなさい」ですが、高知では「はようしな」で「はやくしないで!」になります。すごいことにまったく逆ですね。使用例:のみな→のむな。頻出「なや」で強調。

「~のに」を短縮できるのが土佐弁です。使用例:したらいかんに→したらいけないのに

「~だぞ」を短縮して「~ぞ」でいいです。使用例:あれはかまきりぞ→あれはかまきりだぞ
ねや、にゃあ
猫でもなんでもありません。高知県民はにゃーにゃーいうのです。「ねや」のなまりだと思われます。同意を求めたり呼びかけたりするときに文末で「~ぞにゃあ」(訳:「~だよねぇ」)と使ったり、単発で「にゃあ」(訳:「なあ、おい」)でもあります。結局にゃーにゃー言っています。使用例:にゃあ、ありゃーいかんぞにゃあ→なあ、あれはいけないよなぁ?。ちなみに私は東京から実家へ帰って久しぶりに親父がにゃーといっているのを聞いたときに軽くカルチャーショックを受けました。
ろう
「~だろう」もこの際短縮です。使用例:なにしゆうろうにゃあ→なにをしているのだろうねえ。私の祖父は「しただろう?」を「しつろう?」といいます。
のう
「の」にアクセントをつけておきましょう。最近の若い人は使わなくなっているやつです。訳「なあ」。語尾につけて同意を求めるニュアンスにしたり、これだけで単発で呼びかけになったりします。「にゃー」に近いなぁ。
にゃあ
未然形について「ないと」の意味。使用例:くわにゃーいかん→食べないと行けない。関西では「なあ」を使いますね。「にゃあ」は土佐弁だけではないかも知れないとも少し思います。でも形容詞の未然形にもつくのは土佐弁だけでしょう。使用例:しろーにゃあいかん→白くなければならない


わかりましたか。適当に「がじゃきに」といってみてください。一日2,3回やればえもいわれぬ感興を味わえるでしょう。


助動詞的単語


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  • ゆう/よった/ちゅう/ちょった/ちゃる/ちょく/ちゃある/ん/す/さす/


ゆう
関西弁の「よる」、「おる」に相当します。英語でいう現在進行形です。動詞の連用形につなげて使い、連句「ている」で訳せます。土佐弁はないですが、関西系は「しやがる」の意味にもなりますのでご注意ください。使用例:くいゆう(関西:くいよる)→たべている。活用形は日本語とは違う特殊なものです。それも後述。ちなみに否定は「やーせん」「よらん」
よった
上の過去形にあたります。英語の過去進行形です。訳「ていた」。同上で「しやがった」にもなり得ます。使用例:さっきはサッカー見よった→見ていた
ちゅう
ネズミでもなんでもありません。直訳「してしまっている」ですから、英語の現在完了です。継続の意味にも、完了の意味にも、経験の意味にも使えますのでまるきり一緒です。関西のほかの範囲では「ちょる」とか言ったりするでしょう。「ておる」がなまって「ちょる」と「ちゅう」なんですね。否定形は「ちゃーせん」「ちょらん」です。使用例:ごはんたいちゅう→ごはんを炊いて(しまって)いる
ちょった
もう説明は要りませんね。過去完了です。すごい、英語といっしょじゃん。「ておった」のなまり。使用例:ごはんがたけちょった→ごはんが炊けていた
ちゃる
これも関西方面によくありますかね。関西弁では「たる」のはずです。「てやる」のなまりでしょう。訳「てあげる」。連用形に接続しますが、發音便が「う」に変形することが多いでしょう。使用例:くうちゃる、くっちゃる(関西:くうたる、くったる)→たべてあげる
ちょく
「ておく」のなまりです。使用例:ごはんをたいちょく→ごはんを炊いておく、応用例:おいちょっちゃりや→置いておいてあげなさい、おいちょっちゃっちゅうちゃ→置いておいてあげているってば
ちゃある
「てある」のなまりです。使用例:ご飯を炊いちゃある→ご飯を炊いてある

否定の助動詞「ず」が終止形でも「ん」という音で使われるのが日本の方言です。使用例:みん→みない
す、さす
なつかしい古典ですね。さすがに「しむ」はあまり聞きませんがほんの最近まで使っていたと聞いた覚えがあります。使役の助動詞です。日本語では「せる」に訳すようになっています。独自に他動詞を形成すると音便変化がすさまじいので注意。使用例:みさす、みらす(誤りかと思われるが慣用)→みさせる、くわす→くわせる(独自他動詞)、くわいたら→くわせたら


変化


命令形語尾が「い」音「え」音併用なので気をつけましょう。


動詞・する
せ・し、し、する、する、すれ(すりゃ)、しー・せー
助動詞系・ゆう
ゆうろ、よっ・やーせ、ゆう、ゆう、よりゃ、より・よれ
助動詞系・ん
んろ、んかっ、ん、ん、?、?
助動詞系・す
さ・そ、い、す、す、しゃー、しー・せー

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